スリランカで日本語教師になるには？｜求人の探し方・需要も解説

この記事では、スリランカで日本語教師になるために必要な情報を解説します。

スリランカはインドの南に位置する島国で、緑豊かな自然、美しいビーチ、歴史的な仏教遺産など、近年観光地としても人気の国です。

政治・外交面では日本とのつながりも強く、親日的な国でもあります。

スリランカでは日本のアニメ・マンガに興味を持つ若者が増えているほか、日本への就労機会をめざす人も増えるなど、日本語学習への関心が高まっています。

そんなスリランカで日本語教師になってみたいと考えている方に、この記事ではこんな疑問にお答えします。

スリランカの日本語教育事情、必要な資格要件、就職活動の方法、スリランカの基本情報まで、スリランカで日本語教師として働くために知っておくべきことを詳しく解説します。

興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

スリランカの日本語教育事情

スリランカにおける日本語教育は、1967年に首都コロンボの私塾で始まりました。

その後、1975年に大使館の日本語講座として受け継がれ、1994年からスリランカ日本語教育協会附属日本語講座として民営化されました。

1978年にケラニア大学で日本語の課外コースが開講。

1979年に高校卒業試験兼大学入学試験（Aレベル試験）の選択科目に日本語が採用されたことにより、高校での日本語教育が始まった。

2001年12月には、中学卒業試験兼高校入学試験（Oレベル試験）の選択科目に日本語が導入されるなど、学校教育における日本語教育の裾野が広がっています。

最新の調査（2021年度）の教育段階ごとの学習者数・教師数内訳は以下のとおりです。

スリランカでは中等教育機関（中学・高校）における学習者の層が多くを占めています。

一方、中等教育機関における日本語教師は1人で多くの学習者を教えるため、教師数としては少ない状況です。

一見すると中等教育機関に日本語教師の需要がありそうなスリランカですが、中身を見ていくとそうでもなさそうです。

ではどこに需要があるのでしょうか？

次にスリランカにおける日本語教師の需要について、解説していきます。

スリランカでの日本語教師の需要

ここでは、スリランカにおける日本語教師の需要について解説します。

結論から言うと、日本語教育の需要は今後の期待が持てるスリランカですが、日本人の教師の需要はかなり厳しいです。

ここでは、国際交流基金による調査結果をもとに、スリランカにおける日本語教育の需要について、近年の動向と将来性を解説していきます。

スリランカの日本語学習者数

スリランカの日本語学習者数は9,746人（国際交流基金「2021年度 海外日本語教育機関調査」）。

学習者数は1万人弱と世界第24位で、南アジア地域ではインドに次いで多い国です。

近年の動向を見ると上下を繰り返している状況ですが、ここ数年は増加傾向にあると見られています。

なかでも日本での就労を目的とした学習動機や日本語自体への関心の高まりで日本語を学習する若年層が増えていることが増加要因になっているようです。

日本製品やODAによる日本の建造物、テレビドラマ『おしん』の影響や仏教国であることから、スリランカの人々は日本に好意的な印象を抱いています。

また、アニメ・マンガなどのサブカルチャーに親しみを持ち学習を始める若者も多く、日本での就労機会を求めて子どもに日本語を学ばせたいという保護者も少なくありません。

このため、スリランカの学習者数は今後も堅調に推移していくのではないかと考えられます。

では、次に日本語教師の状況について見ていきます。

スリランカの日本語教師数と日本人教師の割合

国際交流基金の調査によると、スリランカで働く日本語教師は164人（「2021年度 海外日本語教育機関調査」）。

そのなかでも日本人教師は15人とわずかです。

それぞれの教育段階での分布も見てみましょう。

以下の表をご覧ください。

教育段階	現地人教師	日本人教師
初等教育	0人	0人
中等教育	72人	9人
高等教育	20人	4人
学校教育以外	71人	7人

母数が少ないため、あまり顕著な傾向はみられません。

というのも、現地の日本語教師の待遇はほとんどが非常勤で、学校教師の傍ら日本語を教えている教師が圧倒的に多いのです。

日本人に限っていえば、すでに現地に在留している日本人が教えているケースが多く、日本から就労ビザを取得して働いている教師はほとんどいません。

それでは、スリランカと何の縁もない日本人がスリランカで日本語教師になれるチャンスはあるのでしょうか？

次に解説します。

スリランカで日本語教師になるには？

日本語学習者が増加傾向にあるスリランカですが、残念ながら日本人教師の活躍の場はほんのわずかです。

考えられる方法としては以下の2つです。

結論から言えば、スリランカへ行くには、JICAしかないのが現状ではないかと考えられます。

それぞれ解説します。

1　JICA海外協力隊

日本語教師としてスリランカをめざすなら、JICA海外協力隊がほぼ唯一の手段です。

募集は原則として年2回（春・秋）。

スリランカの募集は5件程度ですが、増加の兆しもあり、近年は毎回募集があります。

JICA海外協力隊は、独立行政法人国際協力機構（JICA）が運営する国際貢献プログラム。

途上国の開発支援と国際理解促進を目的として、途上国からの要請に基づき専門知識・技術を持つ人が隊員として原則2年間派遣されます。

活動分野は、農林水産、保健衛生、教育文化、スポーツ、計画・行政など多岐にわたり、日本語教育も主要な分野のひとつです。

スリランカの日本語教育に関する求人の多くは地域の教育事務所（政府機関）で、地域の中学・高校を巡回し、日本語授業の補佐や日本語教師の指導を行う業務です。

このほか、大学への派遣も時折見受けられます。

主な応募要件はおおむね以下のとおりです。

応募要件は募集案件によって異なりますが、スリランカの場合、日本語教師資格と実務経験は必須です。

また、スリランカでは英語が広く使われているため、日常会話レベルまで英語力を高めておくと有利でしょう。

このほか、教育事務所などの政府機関の募集要件では女性限定というのが特徴です。

同僚講師や生徒に女性が多いというのが理由のようです。

スリランカの求人を見る際には、性別要件にも注意しましょう。

>>> JICA海外協力隊　公式サイト

2　民間日本語教育機関の日本語教師

スリランカでの日本語学校などでの民間日本語教育機関の求人はほとんど見受けられません。

おそらく、現地の在留邦人を対象に現地の広報などで募集がある程度などではないかと推察されます。

日本語教師資格がなくても、日本人というだけで採用される場合もあるようですが、学習者のレベルが高くなるにつれて、資格がないと対応が難しくなるケースが多くなるでしょう。

このため、スリランカで日本語教師になる場合にも、基本的には下記の日本語教師資格のいずれかを取得しておくと有利です。

また、スリランカでは英会話能力も求められる可能性が高いです。

民間機関の求人情報があるかどうか不明ですが、可能な限り求人サイトをチェックしつつ、養成スクールに入ってくる情報も収集しながら地道に探してチャンスを待つしかなさそうです。

また、他国の場合だと、X（旧ツイッター）などのSNSで求人情報が掲載されていることもあるため、「スリランカ　日本語教師　求人」といったキーワードで検索してみるのも方法です。

以下の関連記事で、海外の求人情報を掲載しているサイトをご紹介しています。

ぜひ見てみてください。

スリランカってどんな国？

国名	スリランカ民主社会主義共和国
首都	スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ
人口	2,216万人（2021年、スリランカ中央銀行）
面積	65,610㎢（日本の0.17倍）
気候	熱帯雨林気候
通貨	スリランカ・ルピー（LKR）　※1ルピー＝約1.8円
宗教	仏教、ヒンドゥー教、イスラム教など
言語	シンハラ語、タミル語、英語

歴史

スリランカの歴史は古く、古代シンハラ王朝が興り、紀元前3世紀にはインドから仏教が伝来しました。

その後、長い間、南インド王朝による征服を受けるなど、抗争を繰り返してきました。

16世紀にはポルトガルの植民地となり、支配権はオランダ、イギリスへ。

1948年にイギリスから独立しセイロンとして自治領へ。

1972年に完全独立して共和国となり、国名を「セイロン」から「スリランカ」に改め、1979年には民主社会主義共和国となりました。

独立後、スリランカは民族間の対立が深刻化。

植民地時代にトマス＝リプトンらの紅茶栽培やゴム農園の労働者として強制移住させられ定住したタミルとの間に内政が勃発。

1983年から2009年まで、タミル人による独立運動をめぐる内戦が続きました。

現在は和平が築かれ、経済成長と観光業の発展に向けた努力が続いています。

スリランカは、豊かな自然と歴史、文化を有する国で、近年は観光業もさかんになってきています。

気候

スリランカは熱帯気候で、年間を通じて高温多湿です。

スリランカの気候は大きく2つのモンスーンに影響されます。

5月から9月にかけては南西モンスーンが島の南西部を激しく襲い、10月から4月には北東モンスーンが主に北部と東部に雨をもたらします。

こうした季節の変化により、スリランカは1年中どこかで雨が降っている状態です。

しかし、高地の中央部では温度が低く、温暖な気候です。

スリランカの気候は、豊かな自然環境と多様な野生生物を支える要因となっており、農業、特に紅茶の栽培に適しています。

通貨

スリランカの公式通貨はスリランカ・ルピー（LKR）です。

レートは1ルピー＝約0.5円。

しかし、経済が不安定でインフレもあるスリランカでは、ルピーの価値は変動しやすい状況です。

最新の為替情報にご注意ください。

なお、クレジットカードは主要都市や観光地では広く使われていますが、小規模な店舗や地方では現金が主流です。

公用語

スリランカの公用語はシンハラ語とタミル語の2つです。

シンハラ語はスリランカの多数民族であるシンハラ人の言語で、国民の約75%が話します。

シンハラ語は、インド・アーリア語派に属するスリランカ独自の言語です。

特徴的な円や曲線を含む独自の文字体系「シンハラ文字」を使用。

語彙はサンスクリット語から借用語も多く、強い影響を受けているとされます。

タミル語はスリランカの主要な少数民族であるタミル人の言語で、特に北部と東部の地域で広く話されています。

また、英語も広く使われており、特に政府、教育、商業などの分野での連結語としての役割を果たしています。

まとめ

以上、スリランカで日本語教師として働くために必要な情報を解説しました。

スリランカで日本語教師になるのはかなりハードルが高いですが、日本語教師になるには日本語教師資格があると有利です。

日本語教師としての専門知識を身につけるとともに実践力を鍛えることができる日本語教師養成講座を受講することをおすすめします。