この記事では、シンガポールで日本語教師として働きたいと思っている方に必要な情報を解説します。
シンガポールはアジアのなかでも独自の経済的な発展を遂げている国です。
日本人のとっては人気の観光地で、温暖な気候でもあることから、シンガポールで働くことに憧れを持っている人も多いのではないでしょうか。
ただ、シンガポールで働くのはかなりハードルが高いのが事実です。
一方で、シンガポールで活躍している日本語教師もおり、決して可能性はゼロではありません。
「観光とビジネス」の印象が強いシンガポールで、日本語教師として働くにはどうすればよいのか・・・
この記事ではこんな疑問にお答えします。
- シンガポールで日本語教師になるにはどんな資格が必要?
- 就労ビザの取得要件は?
- 給料はいくらぐらい?
- シンガポールの日本語教育の需要はどのくらい?
- 就職活動にはどんな方法がある?
シンガポールという国の概要から、必要な資格要件、就労ビザの取得方法、日本語教師の給料事情、就職活動の方法まで、シンガポールで日本語教師として働くために知っておくべきことを詳しく解説します。
あなたも憧れのシンガポールをめざしてみませんか?
興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
- シンガポールで日本語教師として働きたい方
- これから日本語教師としてシンガポールに赴任することが決まっている方
- 海外で働いてみたいと思っている方
シンガポールで日本語教師になるには?
シンガポールは東南アジアに位置する国ですが、近代的なビルが立ち並び、物価も高く、他の東南アジア諸国とは違う高級なイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
シンガポールで働くための主な要件は以下のとおりです。
シンガポールの主な日本語教師勤務要件 | |
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学歴要件 | 大卒または専門学校卒以上 |
日本語教師 資格 | ・日本語教師養成講座修了 ・大学の日本語教師養成課程を主専攻(副専攻)履修・卒業 ・日本語教育能力検定試験合格 |
資格・要件 | その他・コロナワクチン接種 ・実務経験 ・年齢要件 |
(月収) | 給与目安30~45万円程度 |
ここでは、シンガポールで日本語教師として働くために必要な就労ビザの取得要件と日本語教師資格について解説します。
就労ビザ
日本人がシンガポールに在留し働くためには就労ビザの取得が必要です。
ビザの種類としては、「EP(Employment Pass)」または「S Pass」を取得するのが一般的です。
近年、就労ビザの要件が厳しくなっており、シンガポールで働くための最大のハードルになっています。
今のシンガポールは就労ビザの申請条件がすごく厳しい。日本語学校自体ごくわずかだけど、日本語教師の給与だと就労ビザの取得はまず無理。ネイティブの教師はシンガポール国籍の方と結婚した人が多いのかな。ワーホリだと期間が短すぎるし。
— 若林理央 @もの書き (@momojaponaise) June 20, 2023
聞かれて困るのが 昔から時々くる シンガポールに住みたいけれど と言う日本からの問合せ 昔は仕事があればね と応えていたが 今はビザが取れる仕事に就ければね と言ったところだろうか?
— ディープシンガポール (@deepsingapore) June 30, 2023
それほど シンガポールでの就労ビザ取得は難しくなってきている
それぞれのビザの主な要件は以下のとおりです。
EP (専門家向け/最長2年間※新規) | 【収入要件】月額固定給与5,000S$以上 ※年齢により異なる 【COMPASS要件】40ポイント以上 【コロナワクチン接種】必要 |
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S Pass (熟練労働者向け/最長2年間) | 【収入要件】月額固定給与3,150S$以上 ※年齢により異なる 【学歴要件】専門学校卒以上 【コロナワクチン接種】必要 【その他要件】雇用企業のセクターの採用枠内であること |
まず収入要件があり、どちらのビザも月額給与が高く設定されています。
この基準は最近も高く変更されたばかりで、S Passは今後も変更される予定です。
また、収入の基準は年齢があがるにつれて高くなるよう設定されているため、この基準を満たすために年齢要件がある求人も見受けられます。
もうひとつ気になるのがEPで採用されているCOMPASSです。
COMPASSは5つの指標をポイント化し、合計ポイントが40ポイント以上であれば審査合格というEPの新たな審査基準です。
シンガポールMOM[Ministry of Manpower]の公式サイトによると、5つの指標とは「Qualifications」「Diversity」「Support for local employment」「Skills bonus」「Strategic Economic Priorities Bonus」のこと。
多くは雇用主側が満たすべき基準ですが、労働者側の基準としては「Qualification」を満たす必要があり、これは学歴要件です。
世界的に認められる学士資格であれば10ポイント、MOMサイトでリストアップされている世界トップレベル大学の学士資格であれば20ポイント加算です。
ちなみに20ポイントが加算される日本の大学は、東京大学・京都大学・東北大学・大阪大学・東京工業大学の5大学のみです。
このほか、どちらのビザもコロナワクチン接種済みである必要があります。
いずれにしても、就労ビザの取得には勤務先の協力が不可欠なため、勤務先と連絡をしっかり取りながら取得に向けた準備を進めていきましょう。
必要な日本語教師資格・経験
日本語教師としての採用要件については、就労ビザがクリアできれば、多くの求人では日本国内の日本語学校等で必要な要件と同等の資格が必要とされています。
- 日本語教師養成講座修了
- 大学(大学院)において日本語教師養成課程を主専攻(副専攻)
- 日本語教育能力検定試験に合格
また、シンガポールでは間接法で教える学校も多いため、英語力も求められるでしょう。
このほか、学歴は少なくとも大卒以上、教師経験もあればなおよいでしょう。
シンガポールでの日本語教師の需要
シンガポールで働こうとするなら、ビザの取得難易度と同時に、日本語教師の需要がどれくらいあるのか気になるところです。
最新の調査結果から解説します。
シンガポールの日本語学習者数
シンガポールの日本語学習者数は10,837人(国際交流基金「2021年度 海外日本語教育機関調査」)。
世界第21位、東南アジア諸国のなかでは7番目に位置しています。
他国と比べると学習者の数としてはそれほど多くはありませんが、東京23区ほどの面積しかない小さな都市国家のなかに1万人も日本語学習者がいると思えば結構な数といえるのではないでしょうか。
ここ10年程度は1万人あまりで安定的に推移しています。
詳しくは後述しますが、シンガポールには多くの日系企業が進出しているほか、シンガポールでは日本自体への関心の高さが根強いこともあり、日本語は人気の外国語です。
では、次に日本語教師がどのくらいいるのかを見ていきます。
シンガポールの日本語教師数と日本人教師の割合
国際交流基金の調査によると、シンガポールで働く日本語教師は182名(「2021年度 海外日本語教育機関調査」)。
やはり少ないですね。
ただ、注目すべきはネイティブである日本人教師の割合です。
日本語教師全体に占める日本人の割合は8割前後で推移しています。
シンガポールでは総数としては少ないながら、日本人教師の割合がかなり高いことがわかります。
もちろん日本人教師のなかには、もともと日本人配偶者としてシンガポールに在住していた方もいるため、全員が日本語教師として働くだけのためにシンガポールに在留しているとは限りません。
それにしても一定の需要はあるため、悲観するほどではないでしょう。
しかしながらこんな声もあります。
シンガポール在住の日本語教師の友人も、需要がなくなってきていて段々働き口が減っている…と嘆いておりました…😢 https://t.co/ZhfkqVUCRA
— マイコ@🇦🇺日本語教育×コーチングでハッピーを届ける人 (@Maikoala3) September 4, 2022
日本人教師の割合としては8割前後で推移しつつも、総数が減少傾向なのは気になります。
就労ビザの厳格化に加え、オンライン教育の普及も一因と考えられます。
とすると、今後劇的に需要が高まるとは考えにくいため、できるだけ早くシンガポールに行ったほうがいいかもしれません。
シンガポールにおける日本語教師の給料・待遇
シンガポールにおける日本語教師の平均的な給与は、月収約30万円から45万円程度です。
日本語教師の給料としてはかなり高いですね。
これは就労ビザの収入基準を満たすためでもあると考えられます。
シンガポールは日本語教師もビザの要件で給与の下限が決まっていたので、生活に余裕がありそうでした。
— HappyHour🍸 (@HappyHour777777) April 11, 2018
ただ、シンガポールの物価は全体的に日本より高く、生活水準も高いです。
生活に余裕が出るかどうかはそのときの現地事情に左右されるため、額面だけにとらわれずそのときの現地の生活水準をしっかり確認する必要があるでしょう。
待遇面では基本給のほか、賞与支給・有給休暇付与・残業代・住宅手当・医療保険・渡航費用支給などがあるため、求人情報をよくチェックしましょう。
シンガポールの日本語教師求人情報の探し方
シンガポールでは他言語に比べて日本語教育はさかんですが、それでも人口規模が小さく学習者の数が少ないため、日本語教師の活躍の場は限られています。
このため、シンガポールの求人を探しても見当たらないという声もあります。
インドネシアは、他のアジア諸国と比べるとネイティブの日本語教師の求人が本当にないなぁ。バリ島で働きたいけど、やっぱり日本で探すしかなさそう。
— M (@ryoko_canada) February 25, 2023
シンガポールの求人情報を見つける方法としては、養成スクールに入ってくる情報と自分で求人サイトで探す方法があります。
特に以下の2つのサイトは、シンガポールの求人がよく掲載されるため、定期的にチェックしましょう。
https://www.asiax.biz/ | シンガポール最大の日本語ビジネスメディア。 シンガポール在住の日本人や、シンガポール進出を検討している日本人向けに、シンガポールのビジネス情報やニュース、イベント情報などを提供。 シンガポールを中心とした東南アジアの求人情報を業種問わず多数取り扱っており、日本語教師の求人情報も定期的に掲載されている。 |
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https://kamome.asia/ | 中国やアジアで人材紹介事業を展開する中国法人が運営する日本人向け海外転職サイト。 中国のほかシンガポール、ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアの求人情報を幅広く取り扱っている。 現地情報や海外転職ノウハウに関するコラムも豊富で、求人情報以外でもアジアへの転職をめざす人にとって参考になる。 |
以上のほか、日本語教師向けの求人サイトでも掲載される場合があります。
以下の関連記事では、日本語教師向けの求人サイトを紹介しています。
シンガポールの求人は少ないながらも全くないわけではないので、あきらめずにこまめに求人サイトをチェックしましょう。
シンガポールの日本語教育事情
ここでは、シンガポールで日本語教師として働くために知っておくべき現地の日本語教育事情について解説します。
シンガポールでは1965年の独立後、外国企業を積極的に誘致し、1970年代から日本企業の進出も増加。
同時に日本語教育への関心も高まり、1980年代後半には日本語学習ブームが起こりました。
1999年以降、日本の文化やエンターテイメントが流行するなど、現在でも日本語はシンガポールで人気の外国語になっています。
最新の調査(2021年度)の教育段階ごとの学習者数・教師数内訳は以下のとおりです。
シンガポールでは、主に大学や公教育以外の民間日本語教育機関でさかんに行われています。
大学では4つの国立大学であらゆるレベルの日本語教育が行われており、なかでもシンガポール国立大学は20年以上の歴史があり日本研究を専門とした博士課程も設置されています。
社会人を対象とした日本語学校も多数あり、日本関連ビジネスでの就職を目的とした学習者が増加傾向にあるようです。
中等教育でも、中国語を母語とする優秀な生徒に第三言語として日本語を含む外国語の学習が許され、高いレベルの日本語教育が行われています。
シンガポールってどんな国?
国名 | シンガポール共和国 |
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首都 | シンガポール |
人口 | 592万人(2023年、シンガポール統計局) |
面積 | 734.4㎢ |
気候 | 熱帯モンスーン気候 |
通貨 | シンガポールドル(SGD) ※1ドル=約105円 |
宗教 | 仏教、イスラム教、ヒンズー教、道教、キリスト教ほか |
言語 | 英語、マレー語(国語)、中国語、タミル語 |
歴史
シンガポールの歴史は、1819年にイギリスの東インド会社がトーマス・ラッフルズ卿を派遣し、マラッカ海峡の要衝に貿易港として開港したことに始まります。
ラッフルズの尽力によりシンガポールは急速に発展し、東南アジアにおける貿易の中心地となりました。
1942年には太平洋戦争の戦火に巻き込まれ、日本軍の占領下に置かれます。
戦後はイギリスの植民地に戻り、1963年にはマレーシア連邦の一員となりましたが、1965年に連邦を離脱、完全独立を達成しました。
独立後、シンガポールはリー・クアン・ユー首相のリーダーシップの下、自由貿易政策と経済開発を推進し、急速な経済成長を遂げました。
現在では、世界屈指の経済大国であり、国際金融センター、物流ハブとして重要な役割を果たしています。
外交面では、国際連合やASEAN(東南アジア諸国連合)などの多国間機関を通じて国際協力を重視。
国際法と国際的な規範を尊重し、平和的解決を目指す姿勢を取っています。
特に東南アジア諸国との関係を重視し、地域の平和と安定に積極的な役割を果たしています。
日本との関係については、戦後直後は旧日本軍の補償問題で反日的な感情がくすぶっていましたが、現在は政治・経済・文化などあらゆる面で活発に交流が行われており、良好な関係を保っています。
気候
シンガポールは赤道近くに位置しており熱帯雨林気候に属します。
年間を通じて高温多湿で、日中は30度以上、夜間でも25度程度までしか下がらない日が多いです。
湿度は80%前後と高く、日常的にスコールや雷雨が発生します。
乾季や雨季といった季節はありませんが、11月から1月まではモンスーン(季節風)の影響を受けて特に雨が多く集中的な豪雨も珍しくありません。
通貨
シンガポールの通貨は、シンガポールドル(Singapore dollar)。
通貨記号はS$、通貨コードはSGDです。
紙幣は、2ドル、5ドル、10ドル、50ドル、100ドルの5種類が発行されているほか、1ドル以下のコインも発行されています。
日本円とシンガポールドルのレートは、1シンガポールドル=約105円。
シンガポール国内ではシンガポールドルが広く流通しており、主要な取引はシンガポールドルで行われています。
また、クレジットカードやデビットカードなども広く利用されています。
公用語
シンガポールは多民族国家のため4つの公用語があります。
英語、マレー語、中国語、タミル語です。
英語は、ビジネス、政府、教育などの公式な場で広く使用されており、事実上の主要言語です。
英語は多くのシンガポール人にとって第一言語または第二言語であり、国内でのコミュニケーションの主要手段となっています。
マレー語は、シンガポールの国歌や軍事の分野でも使用されている国語です。
マレー文化はシンガポールの歴史とアイデンティティの重要な部分を形成しています。
中国語は、中国系の華人の間で広く使用されています。
タミル語は、シンガポールのインド系コミュニティの主要言語です。
インド系の文化や伝統を反映し、メディアや教育にもその影響が見られます。
これら4つの公用語はシンガポールの教育制度にも組み込まれており、学生は英語の他に母語として、マレー語、中国語、またはタミル語を学びます。
日本語はこれらの公用語に次ぐ第3の言語として、多くのシンガポールの人々が学習しています。
まとめ
以上、シンガポールで日本語教師として働くために必要な情報を解説しました。
- シンガポールの就労ビザの取得難易度は年々高くなっている。
- 日本語教師に求められる要件は「大卒+日本語教師資格」が基本
- 給与は月収30~45万円程度だが生活水準も高い。
- 日本語教師に占める日本人教師の割合は8割以上と高い。
- 求人情報は多くないため、地道に求人サイトを確認すべき。
シンガポールで日本語教師になるにはまず、日本語教師の資格要件を満たす必要があります。
日本語教師としての専門知識を身につけるとともに実践力を鍛えることができる日本語教師養成講座を受講することをおすすめします。