この記事では、ドイツで日本語教師になるために必要な情報を解説します。
ドイツでは1万人以上の人々が日本語を学んでいます。
遠く離れた国で日本に興味を持ち、日本語を勉強してくれている人たちがいるのはうれしいことですね。
そんな人たちに「日本語を教えてみたい!」と思う人も多いはず。
ドイツは西欧で最も人口が多く、ヨーロッパ独特の古風な街並みを持つ国です。
ドイツで日本語教師を考えている方へ、この記事ではこんな疑問にお答えします。
- ドイツの日本語教育の需要はどのくらい?
- ドイツで日本語教師になるにはどんな方法がある?
- ドイツで日本語教師になるのは難しい? 1番可能性のある方法は?
- ドイツってどんな国?
ドイツの日本語教育事情、必要な資格要件、求人探しの方法、ドイツの基本情報まで、ドイツで日本語教師として働くために知っておくべきことを詳しく解説します。
興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
- ドイツで日本語教師として働くことに興味がある方
- すでにドイツに住んでいて、日本語教師に挑戦してみたい方
- 海外で働いてみたいと思っている方
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ドイツの日本語教育事情
ドイツにおける日本語教育は、1887年のベルリン大学東洋言語学科設立に始まります。
1980年代、日本経済の好調と共に日本語教育への関心が高まり、大学での日本関連学科や語学コースが増加しました。
1982年には中等教育機関での日本語教育が開始され、1999年には大学入学資格試験科目として認められました。
2010年代に入ると、ケルン大学とボーフム大学に日本語教員養成課程が設置されました。
ドイツではさまざまな層が日本語学習に取り組んでおり、日本語学習者数は微増傾向にあります。
最新の調査(2021年度)の教育段階ごとの学習者数・教師数内訳は以下のとおりです。
調査結果から、ドイツでは初等教育段階を除き、あらゆる段階で日本語学習者が一定数存在していことがわかります。
ドイツではさまざまなレベルの教育機関で日本語が教えられており、VHS(公的な一般成人向け生涯教育機関)では、日本語コースが多くの町で提供されるなど、日本語教育の現場は多岐にわたっています。
また、ドイツにおいても若年層を中心に日本のポップカルチャーが人気を博しており、日本語学習の動機になっています。
次に、ドイツにおける日本語教師の需要について解説します。
ドイツでの日本語教師の需要
ドイツと日本は地理には遠い国同士ですが、外交・経済・文化面でお互いに親密な関係にあります。
そんなドイツで日本語教師の需要はどの程度あるのでしょうか?
ドイツにおける日本語教育の特徴は以下のとおりです。
- 日本語学習者数は1万人以上(西欧圏では第3位)。
- 教師は一定の需要はあるが、日本人はすでに就労可能なビザを取得している人向けの求人が多い。
- 主な就労先は生涯学習機関で、雇用形態は非常勤が多い。
- 日本語教師の収入だけで生活するのは難しい。
それぞれの特徴を学習者数および教師数について、近年の動向を分析しながら、ドイツにおける日本語教師の需要を解説していきます。
ドイツの日本語学習者数
ドイツの日本語学習者数は11,687人(国際交流基金「2021年度 海外日本語教育機関調査」)。
西欧圏ではフランス、イギリスに次いで第3位です。
近年の学習者数の動向については、1万人から1万5,000人あたりを上下していてほぼ横ばいです。
ドイツでは成人層を中心にあらゆる世代で日本語が学ばれています。
「日本語・日本文化そのものへの興味」がきっかけで日本語学習を始める人も多く、こうした人たちは各地のカルチャーセンターのようなところで学んでいます。
コロナ禍の影響で日本語学習を断念せざるを得ない人がいた一方で、オンライン学習で始める人もおり、ドイツではコロナによる日本語教育需要への影響は限定的だったようです。
ドイツの日本語学習者数は今後も同水準で推移していくと予測でき、一定の需要は見込めそうです。
では、日本語教師はどの程度必要とされているのでしょうか?
次に日本語教師の状況について見ていきます。
ドイツの日本語教師数と日本人教師の割合
国際交流基金の調査によると、ドイツで活動する日本語教師は353人(「2021年度 海外日本語教育機関調査」)。
そのうち、ネイティブの日本人教師の割合は7割~8割程度です。
日本人教師について教育現場ごとの現状を把握するため、教育段階別の現地人教師と日本人教師の数を以下の表にまとめました。
教育段階 | 現地人教師 | 日本人教師 |
---|---|---|
初等教育 | 1人 | 2人 |
中等教育 | 18人 | 27人 |
高等教育 | 35人 | 94人 |
学校教育以外 | 41人 | 151人 |
日本人の教師は学校教育機関以外の機関で数が多く、8割近くが日本人の教師です。
しかし、ドイツには日本語が学べる語学学校は少なく、学校以外ではVHSと呼ばれる生涯学習機関で多くの人が学んでいます。
日本でいうカルチャーセンターのような機関です。
VHSで活動する日本語教師の雇用形態は非常勤やボランティアがほとんどで、日本人教師はすでに就労可能なビザを持っていたり永住権を有する日本人が担っているのが実態のようです。
また、学校教員の場合はドイツの教員免許が必要で、大学教員は修士以上の学歴や研究実績、高いドイツ語能力が求められます。
こうしたことから、ドイツでの日本人教師の需要は一定程度あるものの、主にドイツに居住している日本人が対象となり、ドイツの就労ビザを持たない日本人にとっては職を得て生活していくことが難しい状況です。
それでも、ドイツで日本語教師になれる方法は存在するのでしょうか?
このあと、ドイツで日本語教師になるための具体的な方法と求人の探し方について解説していきます。
ドイツで日本語教師になるには?
ドイツにおける日本人教師の勤務形態は非常勤がほとんどで、その収入だけでは現地で生活していくのは難しい状況です。
ただ、雇用形態にこだわらなければ、ドイツで日本語教師を経験する方法もあります。
ドイツで日本語教師になるための方法は以下の3つです。
- 日本関連分野で修士以上の学歴がある人 ⇒ 大学の教員になる
- 就労可能なビザをすでに持っている在留邦人 ⇒ 非常勤講師になる
- 何もない人 ⇒ インターン / ワーキングホリデーに参加する
それぞれのルートを解説します。
1 大学の教員
ドイツで高等教育機関(大学・大学院)の教員になろうとする場合は、日本または日本語に関する専門分野について、修士号以上の学歴がまず必要です。
また、日本語を教えるだけでなく、専門分野についての教鞭をとれるだけのドイツ語の語学力も必要です。
そのうえで、各大学(大学院)の求人情報を見つけ、採用試験を受ける形になります。
このため、ドイツで新たに就労ビザを取得し日本語教育の大学教員になるのは非常に狭き門であることを覚悟しなければなりません。
なお、ドイツの高等教育機関の求人情報は、日本の日本語教師求人サイトに掲載される場合があるため、チェックしてみてもよいでしょう。
2 非常勤講師(日本語学校・生涯学習機関)
学校教育以外の日本語教育機関としてはVHS(生涯学習機関)がメインです。
日本語学校は非常に少ないですがチャンスがあれば求人があるかもしれません。
ただ、基本的には非常勤講師としての採用となるでしょう。
ドイツで日本語教師として働くには、以下のいずれかの日本語教師資格を持っていると有利です。
- 日本語教師養成講座420時間修了
- 大学(大学院)において日本語教師養成課程を主専攻(副専攻)
- 日本語教育能力検定試験に合格
就労ビザの取得は難しいため、既にドイツで就労可能なビザ(長期滞在ビザ、ワーキングホリデービザ、永住権など)を持っている人が対象となります。
就労ビザを持っていない方は、求人情報を確認する際に、応募条件を慎重にチェックすることが重要です。
ドイツの求人情報については、求人サイトに掲載される可能性もあるので、念のためチェックしておきましょう。
3 インターンシップ / ワーキングホリデー
ドイツは日本とワーキングホリデー制度に関する協定を結んでいます。
ワーキングホリデービザを取得してドイツに長期滞在し、日本語教師アシスタントなどのアルバイト先を見つけて活動するか、ボランティアで活動する方法が考えられます。
「海外で日本語教師の仕事を体験してみたい」「ドイツ語を上達させたい」といった人にはおすすめの方法です。
ただし、ワーキングホリデー制度は年齢が30歳までである必要があります。
ワーキングホリデー制度で現地の日本語学校の求人を探す場合は、基本的には自分で現地の求人情報を探すことになりますが、ワーホリエージェントの就職サポートでアドバイスを受けることも可能です。
ドイツってどんな国?
国名 | ドイツ連邦共和国 |
---|---|
首都 | ベルリン |
人口 | 8,436万人(2022年、ドイツ連邦統計局) |
面積 | 357,588㎢(日本の約95%) |
気候 | 温帯海洋性気候・大陸性気候 |
通貨 | ユーロ ※1ユーロ=約160円 |
宗教 | カトリック、プロテスタント、イスラム教、ユダヤ教ほか |
言語 | ドイツ語 |
ドイツは、ヨーロッパ中央部に位置する連邦共和制国家です。
EU加盟国の中で最も人口が多く、豊かな歴史と文化を持ち、世界的に影響力のある経済大国としても知られています。
第2次世界大戦後に東西に分裂しましたが、1990年の統一を経て、現在は欧州連合の主要メンバーとして活動しています。
自動車産業、工業技術、科学研究においても高い評価を受けており、伝統と革新が共存する国です。
そんなドイツで日本語教師として生活するために必要な基本情報を解説します。
歴史
ドイツは、中世初期には神聖ローマ帝国の一部として発展し、数多くの小国家に分裂していました。
19世紀半ば、プロイセン王国を中心として統一が進み、1871年にドイツ帝国が成立しました。
第1次世界大戦で敗北後、ヴァイマル共和国が誕生しましたが、その後の経済危機と政治的不安定さがナチスの台頭を促しました。
アドルフ・ヒトラーの下で第2次世界大戦を引き起こし、敗戦後は東西ドイツに分裂しました。
冷戦時代を経て、1989年にベルリンの壁が崩壊、1990年に再統一が実現しました。
現在は民主的な連邦共和国として、欧州連合の主要なメンバー国の1つとなっています。
ドイツは現在も文化、科学、経済の分野で世界に多大な影響を与えています。
気候
ドイツはヨーロッパの中心部に位置しているため、気候は温帯海洋性気候と大陸性気候の特徴を併せ持っています。
北部は北海とバルト海に面しており、穏やかな海洋性気候です。
冬は比較的温暖で湿度が高く、夏は涼しい日が多いです。
一方、南部や内陸部では大陸性気候の影響を受け、夏は暑く冬は寒くなり、温度差が大きいのが特徴。
特にバイエルン州のアルプス地方では、冬に豪雪が降ることもあります。
春と秋は全国的に温和で、多くの地域で季節の移り変わりがはっきりとしています。
年間を通じて降水量は比較的均一で、特に夏には雷雨が頻繁に発生。
ドイツの気候は地域によって異なりますが、全体的には四季の変化がはっきりしています。
通貨
ドイツはユーロ圏に属しており、通貨はユーロ(€)を使用しています。
レートは1ユーロ=約160円。
2002年にドイツマルク(DM)からユーロに移行しました。
ユーロは欧州連合(EU)内の多くの国々で共通通貨として採用されており、ドイツ国内だけでなく他のユーロ圏国でも自由に使用できます。
ドイツの経済はユーロ圏内でも最大規模であり、ユーロの安定と価値に大きな影響を与えています。
現金の使用は依然として普及しており、特に小規模な店舗やレストランでは現金払いが好まれる傾向にあります。
しかし、都市部や観光地ではクレジットカードや電子決済が広く受け入れられています。
ATMは全国に広く分布しており、簡単に現地通貨を引き出すことができます。
公用語
ドイツの公用語はドイツ語です。
ドイツ語は西ゲルマン語群に属する言語で、英語とオランダ語と比較的近い関係にあります。
ドイツには、ドイツ語以外にも様々な方言が存在します。
バイエルン語、ザクセン語、アレマン語など、標準ドイツ語とは発音、語彙、文法など地域によってが異なる場合があります。
また、ドイツ語は、ドイツ、オーストリア、リヒテンシュタイン、スイスの4つの国の公用語になっています。
まとめ
以上、ドイツで日本語教師として働くために必要な情報を解説しました。
- ドイツの学習者数は1万人以上で西欧では3番目の多さ
- ドイツでの日本語教育需要について近年は横ばい
- 非常勤雇用が多いため、すでに就労可能なビザを持っている日本人教師がほとんど
- 就労可能なビザがない場合は、ワーキングホリデービザで渡航する方法がある
- 地域の日本語教室で活動するには日本語教師資格があると有利
- ドイツでは日本語教師だけで生計を立てるのは困難
- ドイツで大学教員になるには、修士号か博士号が必須
ドイツで日本語教師になるには、日本語教師資格を持っていると有利です。
日本語教師としての専門知識を身につけるとともに実践力を鍛えることができる日本語教師養成講座を受講することをおすすめします。
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