登録日本語教員の資格取得ルートの一つである「養成機関ルート」。
試験ルートと比べて、どのような違いがあり、どんな人に向いているのでしょうか。
養成機関ルートは、単に基礎試験が免除されるルートというだけではありません。
登録日本語教員として求められる資質・能力を体系的に身につけるための育成ルートでもあります。
本記事では、養成機関ルートの流れ・特徴・メリット・デメリットを整理しながら、どのような人に適しているのかを解説します。
登録日本語教員の養成機関ルートとは?

登録日本語教員の資格取得方法には、「試験ルート」と「養成機関ルート」の2つがあります。
養成機関ルートは、文部科学大臣の認可を受けた養成機関(登録日本語教員養成機関)で所定の課程を修了することで、国家資格取得をめざすルートです。
登録日本語教員をめざす多くの人が養成機関ルートを選択しており、主流となっている取得方法でもあります。
養成機関ルートでの資格取得までの流れは、以下のとおりです。
- 登録日本語教員養成機関の養成課程を受講
- 日本語教員試験(応用試験のみ)を受験
- 合格後、実践研修を受講
- 修了後、登録日本語教員の申請
- 審査後、結果通知・登録証交付
試験ルートとは異なり、養成機関ルートでは、養成課程を受講・修了することで、国家試験(日本語教員試験)の基礎試験が免除されます。
養成機関ルートは、単に試験勉強の負担を軽減する方法ではなく、日本語教師としての基礎力や実践力を養うためのプロセスでもあります。
そのため、資格取得までの道筋が比較的明確で、体系的に学びながら進められるのが特徴です。
なお、養成課程を経て国家資格をめざすルートとして「Cルート」がありますが、国家資格制度への移行のための時限措置として設定されています。
Cルートとの違いとして、養成機関ルートは「学歴要件がない」「有効期限がない」ところが大きな特徴です。
Cルートを含む、経過措置ルートについては、別の記事で詳しく解説しています。
登録日本語教員|養成機関ルートの具体的な流れ

養成機関ルートは、登録された養成機関で所定の課程を修了し、国家資格取得をめざすルートです。
大まかな流れは次のとおりです。
養成講座の選択
まずは、文部科学大臣の登録を受けた養成機関(登録日本語養成機関)の養成課程を受講します。
養成機関は、主に、民間の日本語教師養成スクールまたは大学です。
コース・カリキュラムにも種類があり、受講形態、受講期間、費用などによって異なります。
民間スクールでは、理論科目をeラーニング・実践科目を通学(オンライン)で行う形式が主流で、期間は6か月〜1年程度、費用は50〜75万円程度が一般的です。
スケジュールやオプションなど詳しいことに関しては、事前に確認が必要です。
養成講座の受講
養成機関では、日本語教育に関する理論分野と実践分野の両方を学びます。
主な内容は以下のとおりです。
・日本語教育の理論
・言語学や教育学の基礎
・教材分析や授業設計
・模擬授業
特に実践分野は、実際に「教える立場」に立つ経験となり、試験対策だけでは得られない学びがあります。
出願
出願サイトからオンラインで、日本語教員試験の出願を行います。
サイト説明に沿って、必要事項の記入と顔写真データの提出などで、出願が可能です。
養成課程修了見込みとして出願する場合は、合格後に修了証の提出が必要です。
受験料は17,300円、指定された方法で納付します。
出願期間は、例年7〜8月頃です。
受験
午後の応用試験(読解・聴解)を受験します。
応用試験では基礎知識のほか、問題解決能力を問う問題が、分野横断的に出題。
聴解試験は、音声による出題で、学習者の発音や現場でのコミュニケーションなどが素材です。
音声は基本的に1度しか流れず、高い集中力が求められる高難度の問題が続きます。
応用試験に合格することで、試験要件を満たし、残りは実践研修要件のみとなります。
実践研修
研修機関において、実践研修を受講します。
多くが、養成課程とセットでカリキュラムに組み込まれています。
模擬授業と教壇実習がメインで、実践面での最終的なスキルの仕上げを行います。
教壇実習では、実際の学習者を相手に、45分授業を2コマ以上行うこととされています。
試験合格と実践研修修了により、国家資格要件を満たすことができます。
登録申請
試験の合格証、実践研修修了証など、必要書類を添付して、登録申請を行います。
審査の結果、問題なければ、登録完了となり、登録証が交付されます。
登録料は4,400円、申請から登録まで2〜3か月程度かかります。
これをもって、国家資格「登録日本語教員」の資格者となります。
以上、養成機関ルートでの登録日本語教員になるまでの流れを見てきました。
こうして見てみると、養成機関ルートでの資格取得は、決して容易ではありません。
ただ、養成課程というステップを踏むことで、着実に知識とスキルを積み上げることができるといえます。
登録日本語教員の養成機関ルート|試験ルートとの違いは?

登録日本語教員の資格取得ルートについて、2つの正規ルートの違いを見ていきます。
ルートごとのプロセスの違いは、以下のとおりです。

2つのルートのプロセスを見比べると、明確な違いは、基礎試験の有無です。
養成機関ルートは、養成課程において基礎的な理論および実践スキルを学ぶため、基礎試験が免除されます。
基礎試験は、基礎的な知識を測定する目的ですが、合格基準が厳しく不合格者のほうが多い試験。
養成機関ルートでは、養成課程を修了することで、基礎試験合格レベルと同等の知識をもつと評価されます。
一方、試験対策がメインである試験ルートは、実践スキルの積み上げが難しい面があります。
こうしたこともあり、正規の資格取得ルートのうち、養成機関ルートのほうが主流であると考えることができます。
登録日本語教員は養成機関ルートが主流になる理由とは?

日本語教員試験における、直近の養成機関ルート受験者の数を見てみると、試験ルートよりも少ない状況となっています。
ただし、これは、制度開始から間もないため、養成機関ルートに対応する養成機関の認可が進んでいないためです。
しかし、今後、認可が進むにつれて、登録日本語教員養成機関の修了生が増加することで、養成機関ルートが主流になると考えられます。
- 試験ルート:3,538人
- 養成機関ルート:2,409人
今後、養成機関ルートが主流のルートになる理由のひとつとして考えられるのは、受験生側の負担面です。
養成機関ルートでは基礎試験が免除されるため、試験対策の負担が大きく軽減。
さらに、講座内で理論と実践を体系的に学べるため、資格取得と同時に実践的なスキルを積み上げることができます。
また、制度全体の設計を見ても、養成機関ルートを中心とした育成構造になっていることがうかがえます。
実際、養成機関ルートの合格率は60〜70%台と比較的高く、合格者数も多い傾向に。
これは、養成課程を通じて一定水準に到達した人材を登録へとつなげる仕組みが整えられている結果と見ることもできるでしょう。
このように、制度設計と受験生側の合理性の両面から考えると、養成機関ルートが主流となるのは自然な流れであるといえます。
登録日本語教員|養成機関ルートの特徴は?

養成機関ルートの最大の特徴は、文部科学省が示すコアカリキュラムに基づき、登録日本語教員として求められる資質・能力を体系的に育成する設計になっている点です。
具体的には、次の3つの側面があります。
① 求められる資質・能力を網羅的に学べる
養成機関ルートは、文部科学省が示す「登録日本語教員実践研修・養成課程コアカリキュラム」に基づいて設計されています。
コアカリキュラムでは、日本語教師に求められる資質・能力が「知識・技能・態度」の3領域に整理され、49項目にわたるの必須の教育内容が示されています。
養成課程および実践研修では、これらを体系的に履修。
単に試験範囲を押さえるのではなく、登録日本語教員として最低限備えるべき内容を一通り学ぶ設計です。
② 必須内容を押さえつつ、養成機関ごとの特色がある
コアカリキュラムにより、一定の基準は全国で共有されています。
そのため、どの養成機関であっても、登録日本語教員として求められる最低水準は担保されています。
一方で、学習順序や演習の比重、試験対策の手厚さなどは養成機関ごとに異なります。
つまり、「養成機関ルート」と一括りにいっても、その中身は一様ではありません。
ルートを選んだ後は、「どの養成機関を選ぶか」が実質的な分かれ道になります。
③ 養成課程から実践研修まで連続性がある
養成機関ルートでは、養成課程の段階から演習や模擬授業を取り入れ、実践を意識した学習が行われます。
理論中心の学習から始まり、徐々に実践的な内容へと比重が移っていく構成です。
さらに、多くの養成機関では、養成課程の修了後、そのまま実践研修へと進みます。
学び → 確認(試験) → 実践
この流れが途切れずに続く点は、制度設計上の大きな特徴です。
未経験者であっても、段階を踏みながら教壇に近づいていくことになります。
その意味で、養成機関ルートは「資格取得のための手段」というよりも、「日本語教師になる過程そのもの」と位置づけられるルートといえるでしょう。
登録日本語教員|養成機関ルートのメリット・デメリットは?
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| メリット | デメリット |
|---|---|
| 基礎試験が免除される 実技指導が十分に受けられる | 費用が高額になりやすい 一定期間、時間的拘束がある 養成機関が遠方の場合も |
メリットについて
最大のメリットは、基礎試験が免除される点です。
応用試験のみの合格率は、60〜70%程度。
油断はできませんが、比較的合格しやすく、試験対策に多大な時間と労力をかけすぎる負担はありません。
その分、実践スキルの向上などに労力を割ける環境だといえます。
また、模擬授業や演習を複数回経験でき、実技指導を十分受けることで、実践経験を積むことができます。
デメリットについて
養成機関ルートのデメリットは、費用負担です。
養成講座の受講料だけでも、50〜70万円程度が相場です。
また、通学日程や実習日程にあわせて、一定期間はスケジュール調整も必要です。
養成講座には完全通信制はないため、多かれ少なかれ通学の必要があります。
養成機関がお住まいの周辺にない場合は、最低限の通学で済むよう、スクール側との調整も考える必要があります。
登録日本語教員の養成機関ルートが向いている人とは?
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ここまで、養成機関ルートの流れ、特徴、メリット・デメリット、試験ルートとの違いなどについて、分析・解説してきました。
これらを踏まえ、登録日本語教員の資格取得ルートのうち、養成機関ルートに向いている人は、どんな人なのか、ご紹介します。
試験対策の負担をできるだけ抑えたい人
養成機関ルートでは所定の養成課程を修了することで、難易度の高い基礎試験が免除されます。
試験対策は応用試験に集中でき、養成課程で学ぶ実践的な知識はそのまま応用試験対策としても役立ちます。
受験する試験を合格率の比較的高い応用試験のみに絞ることで、試験勉強にかかる負担を抑えつつ、実践力の習得により多くの時間を充てることが可能に。
結果として、「試験のための学習」に偏りすぎることなく、日本語教師としての土台づくりに時間を使えます。
未経験から段階的に力をつけたい人
日本語教育の経験がない場合、いきなり試験対策と実践準備を同時に進めるのは想像以上に大変です。
養成機関ルートでは、理論 → 演習 → 模擬授業 → 実践研修と段階的に進むため、未経験でも着実に力を積み上げていくことができます。
人前で話すことに不安がある場合でも、繰り返し練習できる環境があるのは大きな安心材料です。
実際に教えてみてから進路を判断したい人
日本語教師になりたい気持ちはあるけれど、自分に向いているのかわからず、迷っている方もいるでしょう。
養成機関ルートでは、養成課程から実践研修までの間、教案作成や模擬授業などを数多くこなすことで、日本語教師の擬似体験をすることができます。
そのなかで、思った以上にやりがいを感じることもあれば、想像以上に難しいと感じることもあるかもしれません。
養成課程を通して、実際に教えたり、考えることで、自分の進路をより明確にすることができるでしょう。
体系的に日本語教育を学び直したい人
ボランティアなどで教えた経験があっても、理論を体系的に学んだことはないというケースは少なくありません。
養成機関ルートでは、コアカリキュラムに基づいて基礎から学び直すことができます。
将来的に教育の幅を広げたい人や、より専門性を高めたい人にとっては、土台づくりの時間としても意味があります。
養成機関ルートを検討する際のポイント

養成機関ルートは主流の取得方法ですが、費用や期間の負担も小さくはありません。
だからこそ、勢いで決めるのではなく、いくつかの観点から整理しておくことが大切です。
ここでは、検討する際に確認しておきたいポイントを挙げておきます。
学習期間と生活との両立は可能か
養成機関ルートは、半年〜1年以上の期間にわたって学習を続けることになります。
・平日通学が可能か
・土日中心の学習が必要か
・オンライン受講の方が現実的か
など、自分の生活リズムと無理なく両立できる形かどうかを確認しておくことが重要です。
途中で負担が大きくなりすぎないか、現実的なスケジュールを想定してみましょう。
試験対策のサポート体制は十分か
養成機関ルートでも、応用試験への合格は必要です。
講座によっては試験対策講座が含まれている場合もありますが、内容やサポート体制はスクールごとに異なります。
・試験対策はカリキュラムに組み込まれているか
・追加費用が発生するのか
・質問やフォロー体制はあるか
といった点は、事前に確認しておきたいポイントです。
実習の内容と現場とのつながり
養成機関ルートの大きな特徴は、実践経験です。
しかし、実習の回数や内容、サポート体制は講座によって差があります。
・模擬授業の回数
・教壇実習の形式
・現場見学の機会
など、どの程度実践に触れられるのかを確認しておくと、入学後のギャップを減らすことができます。
養成機関ルートから登録日本語教員になろう!
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以上、登録日本語教員の資格取得ルートのひとつである「養成機関ルート」について、解説してきました。
ここまで整理しても、最終的な判断に迷うことはあるかもしれません。
その場合は、無料相談や説明会を活用して、具体的なカリキュラムやサポート体制を直接確認してみるのも一つの方法です。
実際に話を聞くことで、
・自分に合いそうかどうか
・不安に感じている点が解消されるかどうか
をより具体的にイメージできるようになります。
養成機関ルートは、より着実に国家資格をめざすメインルート。
養成機関ルートで登録日本語教員をめざしましょう!

